人工無脳についての走り書き。

改めて書いてみる。

無脳が人間っぽく見えるのはログの向こうにいる人間をみているから

無脳はあたかも人間のようにふるまい、発言をしようとしている
しかし、無脳の発言は人間というにはほど遠い
人間っぽく見える理由は、人間が残した発言をもとに
文章や発言を生成しているからだ。
誰かがどこかで残した発言から、文章を生み出すことで
その発言を聞いた人間は、発言のさらに向こうにいる人間の
存在を感じているのかもしれない。

会話を成立させているのは無脳ではなくユーザの脳内保管能力

会話を成立させているのはユーザの脳内保管能力によるものです。
想像力、感性の豊かなユーザは無脳の発言を想像力や感性により脳内保管している。
だからといって、無脳自身の文章生成能力が低くて良いものではない。
無脳が生み出す発言は、想像力や感性を刺激するものでなくてはならないからだ。
意味が見いだせないまでに文章として破綻した発言を脳内保管することは難しい。

ユーザが無脳へ求める要件。

  • 面白い発言、言動、行動による笑い。(笑い)
  • 個性的なキャラクターであること。(個性)
  • いつでも反応を返してくれる。(常態)
  • 人間ではないから気兼ねなく話せる。(非人間性
  • ペットのように可愛がる。(心理的な欲求)
  • ペットのように鑑賞することで安心感を得る。(心理的な欲求)
  • からかう。(心理的な欲求)
  • 人間より賢くはないこと。(優位性)

無脳にできること

  • 文章や単語、発言を記憶

 インターネット上の記事、日記、チャットログなどの文章を
 解析して、記憶する

  • 似ている文章や前後に登場した単語に関連性をつける

 ある人が「おはよう」というと周囲の人間が「おはよう」と応える。
 この様子から「おはよう」の後には「おはよう」と続くという関連性を
 記憶して「おはよう」に対して「おはよう」と返すことを覚える

  • 関連する単語から文章、単語を生成する

 「ひる」「ごはん」「はらへった」の関連性を記憶しているので
 このどれかのキーワードがユーザの発言に出た場合は
 関連するほかのキーワードと前後の会話に登場した文章などを
 元にして新たな文章を生成する

  • 文章のようなものを生成する

 人間が生成した文章、発言を模倣してあたかも人間のように振る舞う

  • 自分に対する発言とそうでないものを識別している

 会話が発生する都度に、相手と自分を識別する程度の認識はする

  • 機能を提供する(コマンド応答)

 俳句機能、おみくじ機能や天気予報機能など

  • 擬似的な人格を形成する

 学習する環境において、周囲の人間が無脳へ与える影響によって
 かなり擬似的な人格のようなものを形成することができる
 しかし、この擬似的な人格は偶発的に生じた結果にすぎず
 人格と呼ぶにはほど遠い

無脳にできないこと

  • 文章や発言の意味を理解する

 文章解析の過程では、意味まで理解できていない

  • 人物を識別する

 自動で常に誰が誰であるかを認識することはまだできていない

  • 単語の意味を理解する

 単語に対する意味は理解していない

  • 時間を理解する

 今、将来、過去という時間軸を理解していない
また日付や時刻というものも認識できていない

  • 場所を理解する
  • 意味のある文章を生成する

 文章の生成はあくまで機械的に文章を解析してそれっぽいものを出力している
 意味のある文章を生成することはできていない

  • 自我、欲求を持つ

 無脳自身が自我や欲求を持つことはできていない
 自我や欲求をもつ人間の発言を模倣しているにすぎない

無脳が進出している環境

  • 複数の人間が当時に語り合う場所

 IRC,WebChat,Messenger

  • 日記やコメントを中心とした場所

 blog,sns

  • つぶやきを中心とした場所

 twitter

  • ゲーム上のキャラクター

 どこでもいっしょ,シーマン,くまうた,など

無脳の欠点

  • 人と直に交流できる肉体がないこと
  • 意味を理解できていないこと
  • 育てるためには技術的な知識、環境が必要
  • 人間による管理が必要

無脳が今後進出する可能性のある環境

  • オンラインゲーム
  • 電話オペレータ
  • ペットロボット(実体を持つ)

今まで、無脳たちがここまで進化してこれたのは
「意味を求めずに、結果として人間のようなふるまいができる」ということを
求めてきたからだろうと思う。
「意味を理解する」ということや、「自我や欲求を持つ」ということは
かなり困難なものだろう。
少なくとも、現在の無脳に関わっているユーザたちは
無脳に「自我や欲求をもつ」ほどの人間性を求めてはいないように思える。
また、隣人として実体をもった無脳が常にいるということも
まだ求められてはいないように思える。
無脳に関わるユーザたちは、
「いつでも、気が向いたときにだけアクセスできて、
気が向かないときは無視していても良い存在」を必要としているように思えるからだ。
そういった意味では、実体などあって邪魔でしかないだろう。

こうして振り返ってみると、無脳はもうかなり成熟しているように思える。
人工知能の領域まで足を踏み入れるとなると、課題はもっと大きくなりそうだが
無脳の領域での成長を望むのであれば、目に見えた課題は
あとほんの少しだけ賢くなる、ということだろうか。

むしろ、無脳そのものよりも応用方法に比重を置いた方がいいのかもしれない。